ひまわり月報6月 法は家庭に入らずって何だろう?
- 慎也 齋藤
- 2023年8月4日
- 読了時間: 2分
岩内ひまわり基金法律事務所の齋藤です。
人が人と生きていくことは本当に大変です。法律事務所によせられる相談は、人が人と生きていく上でのお困りごとですが、身近な人とのトラブルがよく寄せられます。家族内でのお困りごとは特に多いです。ただ、法律の原則は、「法は家庭に入らず」です。
「法は家庭に入らず」の原則は、そもそもローマ法の格言です。国家は、家長によって構成される共同体に介入することはできないとされていました。「家は最も安全な避難所」として、社会は法が支配しますが、家庭の中は「私的領域」として慣習による自治が約束されていました。日本でも、「家制度」の下、戸主の指揮命令による家庭内での自律的解決が優先されてきました。警察など国家権力も「民事不介入」として、家庭の問題には関与しないというスタンスでした。
しかし、私的領域であっても、法的手段が必要になることはあります。家族間であっても、暴力による支配は認められません。そのため、近年、家庭内のことであっても、公権力が対応する必要性があるとして、様々な法律が定められてきています。「家庭内暴力」、ファミリー・バイオレンス、高齢者虐待等々への対応です。平成12年に「児童虐待の防止等に関する法律」が、平成13年に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」が、平成17年に「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」が制定されました。
ただ、このような家庭内の問題に対して法律が介入する状況に対し、反対する立場もあります。本来は、法律による規制に馴染まない「家庭」といった私的領域にまで法律が介入することにより、人々の生活やコミュニケーションが阻害されるとして、ハーバマスというドイツの哲学者は「法による生活世界の植民地化」としています。
私は、法律は、社会に生きている人が生きやすくなるように、人と人との潤滑油として、社会の変化に応じて変わっていくこと、必要であれば人と人との生活にもっと介入してくるようになることも必要なのではないかと思います。ただ、法律相談で、家族内のことまで「裁判で!」と言われると、まず裁判官と話す前に家族と話し合えないかなと思ってしまいます。ただ、家族の間でも暴力を振るわれるとか、そもそも話し合いがなりたたない状況に対しては、法律があなたを守ってくれるので、ご相談ください。
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